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愛と正義を否定する 7月27日

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【産経抄】愛と正義を否定する 7月27日

 昭和45年5月、横浜市で30歳の母親が、脳性まひの2歳の娘を殺害する事件が起こった。母親に同情が集まり、減刑嘆願運動が展開される。それに真っ向から異議を唱えたのが、脳性まひ者の組織「青い芝の会」の神奈川連合会だった。

 ▼「われわれに生存権はないのか」「殺されるのが幸せか!」「殺人を正当化して何が障害者福祉か!」。リーダーの横田弘さんは仲間とともに街頭で訴えた。まもなく横田さんが発表した行動宣言は、全国の障害者に衝撃を与えた。「われらは愛と正義を否定する」。かわいそうだから、障害児を殺した方がいい。そんな「愛」と「正義」はまっぴら、というのだ。

 ▼相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件から、1年が過ぎた。殺人罪などで起訴された元職員の植松聖被告(27)は、本紙に送った手紙のなかで、障害者への差別意識を正当化する。

 ▼「意思疎通がとれない人間を安楽死させます」「多くの人間が幸せに生きる為」。これこそ、平成25年に世を去った横田さんが指摘する、健常者だけに都合のいい「愛」と「正義」に他ならない。

 ▼横田さんは、「バス闘争」でも知られている。川崎市で車いすの乗車を拒否されると、抗議行動として支援者たちと路線バスを占拠した。こんな過激な活動の成果が、低床バスの普及など現在のバリアフリー化である。

 ▼もっとも、知的障害の子供を持つ親の団体には、植松被告の「優生思想」に共感する内容の手紙も寄せられたそうだ。障害者を排除する風潮は、半世紀前と変わっていない。横田さんの著作『障害者殺しの思想』は、2年前に復刊されている。「何故、障害者児は殺されなければならないのか」。重い問いかけが耳に響く

 


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