SSブログ

ダモクレスの剣 7月6日

閉じる

【産経抄】ダモクレスの剣 7月6日

 対馬海峡付近で北朝鮮の駆逐艦から発射された核ミサイルは、海上自衛隊の護衛艦の上空で爆発した。その強力なエネルギーは、時間の流れをかき乱してしまう。

 ▼北朝鮮兵士と自衛隊員がどんな運命をたどるのか。筒井康隆さんのSF短編小説『地獄図日本海因果(だんまつまさいけのくろしお)』で確かめていただきたい。もっとも、昭和43年の発表当時のようには楽しめない。北朝鮮は核開発を着々と進め、日本海に落下するミサイルの実験はもはや常態化している。

 ▼むしろ現実の世界が、筒井さんのスラップスティック(ドタバタ劇)の様相を呈してきた。たとえば米国の大統領は、国内外の難問に取り組むより、気にくわないテレビ局をプロレス会場でやっつけるネットの動画作りに夢中である。

 ▼そのトランプ大統領もさすがに背筋が寒くなっただろう。北朝鮮は4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功したと発表した。米政府も確認した。北朝鮮は確実に、米本土に到達するミサイル技術を備えつつある。

 ▼筒井さんは、やはり核ミサイルをテーマにした『アフリカの爆弾』で、ケネディ元米大統領が国連で行った有名な演説を取り上げている古代ギリシャの故事によれば、王に促されて王座に座った家臣のダモクレスの頭上には、鋭い剣が、髪の毛一本でつり下げられていた。人々は核兵器というダモクレスの剣の下に暮らしていると、ケネディ氏は訴えた。

 ▼北朝鮮メディアは、ICBM発射実験の成功に立ち会って、無邪気に喜ぶ金正恩・朝鮮労働党委員長の写真を配信している。万が一髪の毛が切れてしまえば、世界にどんな厄災がもたらされるのか。若き独裁者の表情からは、想像した形跡がまったくうかがえない。それが一番、恐ろしい。

 

 


タグ:産経抄
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

Facebook コメント