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前川前次官の告発に菅官房長官も応酬 現代の猿蟹合戦で忘れてならない視点 5月28日

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【産経抄】前川前次官の告発に菅官房長官も応酬 現代の猿蟹合戦で忘れてならない視点 5月28日

 おとぎ話のカニはサルを討ち、親の敵を取る。カニはその後、どうなったか。死刑になったと、芥川龍之介は『猿蟹(さるかに)合戦』に書いている。敵討ちを「私憤の結果」と見る世上の声を引いて、カニへの同情は「センティメンタリズムに過ぎない」と。

 ▼何事も適度に熱し適度に冷めている。それが世論の実質である。社会悪への憤りを「公憤」と呼ぶが、当事者が思うほど私憤との差はない。「行政のあり方がゆがめられた」と会見で述べた文部科学省前事務次官、前川喜平氏の憤りも一歩下がって眺めた方がよい。

 ▼国家戦略特区での、獣医学部設置をめぐる騒動である。官邸の強い圧力をにおわせる「総理のご意向だ」の文書は省内に「確実に存在した」という。安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人の選定に「押し切られてしまった」と悔いもした。つまり公憤だと。

 ▼氏は天下り問題で引責辞任した身でもある。官邸への私憤もにじみ、返り血辞さずの告発と映らぬでもない。菅義偉官房長官が人格を責めるような非難で応じては、政治の値打ちを下げるだけだろう。知りたいのは、公正の原則に背く行為があったかどうかである。

 ▼日本の活力を生む事業に、透明性が保たれているかどうかである。政権が掲げる成長戦略の柱なら、政治主導で事を運ぶのはうなずける。後ろ暗さがないなら、事業者選定の経緯をつまびらかにすればよい。核心をぼかすから全てがうさん臭く見えるのではないか。

 ▼文書から「怪」の字が取れても、国民には何の得るところもない。政治の信用は落ち、文科省の看板にはねた泥はいつまでも跡形を残そう。国家戦略特区が「罪人」として見られかねぬことも、残念でならない。不毛な合戦は高くつきそうである。


タグ:産経抄
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