】“子供っぽい”アメリカと大統領 1月31日
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【産経抄】“子供っぽい”アメリカと大統領 1月31日
米ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った時、母国ではクーデターが発生していた。パスポートは失効して、入国も出国もできなくなる。
▼2004年に公開された映画「ターミナル」は、こんな設定で始まる。トム・ハンクスさん演じる主人公は、9カ月間も空港内で生活するはめに陥った。全米各地の空港で、同じような「空港難民」が生まれているのではないか。
▼トランプ大統領が先週署名した大統領令が、大混乱を巻き起こしている。テロ対策を名目として、難民の受け入れを一時停止する内容である。さらに中東、アフリカ7カ国からの一般市民の入国も、90日間禁止するという。この結果、イスラム圏から米国への入国を拒否された人は、数百人に上った。
▼全米15州の司法長官から、違憲だと非難の声が上がっている。各空港では抗議デモが相次いだ。英国やドイツの首相も、懸念を表明している。もっとも、トランプ大統領に動じる気配はない。米国といえば、世界中から移民を受け入れてきた、開かれた国のはずだった。ただ歴史を振り返ると、振る舞いがおかしくなる時もある。
▼19世紀から20世紀はじめにかけて起こった、日本人移民に対する排斥運動もその一つである。司馬遼太郎さんによれば、差別の正体はカネだった。「多分に無思慮な大衆と、利益団体の利益のみを代表する政治家をかかえたこの人工国家にとっていわばゲームのような行為だった」(『アメリカ素描』)。
▼司馬さんは、米国を「子供っぽい」とも評している。確かに、新大統領も相当「子供っぽい」。その大統領が、「アメリカ・ファースト」を合言葉にゲームのような行為にふければ、世界が困惑するのも当然である。
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