後を引く本、というのがある。

 年明け早々、どうにも気になって後を引き、2度、3度取り出して部分読みをしたのは、中屋敷均著『ウイルスは生きている』。

(iStock)

 昨年の講談社科学出版賞を受賞したこの本は、私が取材・執筆を担当している月刊『ウェッジ』2月号の新刊クリップで取り上げ、筆者の中屋敷さん(神戸大学大学院教授)の研究室も訪ね、ご本人から話を聞いた。

 新刊の著者インタビューの記事として、何とか仕上げたわけである。

 しかし、内容であるネオウイルス学は分子生物学でも最先端の領域。対して当方は100パーセントの文系人間。書かれたことを読んでも、直接言葉を聞いても、正直な話、概要を大雑把に理解するのがやっとだった(ただし、中屋敷さんの名誉のために申し添えておけば、文章そのものは一般向けに噛み砕いた大変読みやすいものになっている)。

 細菌よりも小さい存在であるウイルスは、一般的に人間には、インフルエンザやエボラ出血熱などを引き起こす病原体である。

 そして生物学の常識では、ウイルスは「生物」ではなく「物質」と見なされてきた。

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