ライオンが逃げた ７月２２日

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2016.7.22 05:03

【産経抄】ライオンが逃げた　７月２２日

　ロシアの南にあるジョージアの首都トビリシは昨年6月、大洪水に見舞われた。動物園から、ライオンなどの猛獣が逃げ出し、男性1人がホワイトタイガーに襲われ死亡している。

　▼もっとも、こちらはまったくのデマだった。今年4月の熊本地震で熊本市動植物園から、ライオンが逃げ出した。インターネットの簡易投稿サイト「ツイッター」に、こんな投稿をした神奈川県の会社員（20）が逮捕された。悪ふざけをめぐって100件以上の問い合わせが動植物園に殺到し、職員は対応に追われたという。

　▼米国では1938年10月、数十万人もの人々が、火星人襲来を信じて大騒ぎになった。火を付けたのは、SF小説を原作にしたラジオドラマ「宇宙戦争」である。メディア論が専門の松田美佐さんによると、パニックに陥らなかった人たちは、2つのタイプに分けられた。

　▼まず、放送内容自体の非現実性に気づいた、番組のなかに手がかりを見いだした人たちである。別のタイプは、他のラジオ局や友人に問い合わせるなど、番組の外に根拠を見つけた。当時はなかったネットを通してデマや流言にさらされる現代人には、こうした情報を批判する能力がますます重要になってきている（『うわさとは何か』中公新書）。

　▼ネットを使った選挙運動が解禁になったのは、3年前からだ。今回の東京都知事選で各陣営は、ツイッターなど会員制交流サイト（SNS）の活用に力を入れている。候補者からメッセージを受け取る有権者にとって、「内」と「外」両方からのチェック法は大いに参考になる。

　▼とはいえ、スキャンダル報道はあっても、政策論争はない。知事にふさわしい人物を選び出すのは、ネット上のデマを見分けるよりずっと難しい。

 

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