1億円の重さ 6月2日
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【産経抄】1億円の重さ 6月2日
一万円札で1億円分のパックを作ると、縦39センチ、横33センチ、高さ10センチ、重さ10キロの直方体になる。東京・日本橋の日本銀行分館内にある「貨幣博物館」では、模造紙幣で作られたパックを持ち上げることができる。
▼偽の白バイ警官は、本物の札が入ったジュラルミンケース3個をあっという間に奪い去っていった。府中市で昭和43年12月に起きた、戦後最大のミステリーの一つ、「3億円事件」である。人々は、事件の謎の深さもさることながら、何より桁外れの金額に衝撃を受けた。
▼なにしろ宝くじの1等賞金が、1千万円になったばかりである。当時の日本人は「億」という漢字を、「計り知れないほどたくさん」という本来の意味でとらえていた。平成7年に始まった「今年の漢字」のイベントがもし行われていたら、間違いなく億が選ばれていただろう。
▼もっとも10億円単位で土地が転がされたバブル経済の時代を経て、もう誰も、億のカネに驚かなくなった。昨日の社会面は、大阪府内で会社を経営する80代の女性が約5億7千万円の詐欺にあった事件を伝えている。全国のコンビニのATMで約14億円が不正に引き出された事件では、窃盗の疑いで2人が逮捕された。紙面の下にあるのは、ドリームジャンボ7億円の広告である。
▼舛添要一東京都知事(67)の政治資金をめぐる疑惑は、とどまるところを知らない。昨日の都議会の所信表明では、豪華すぎると批判のあった、海外出張でのホテルのスイートルームや航空機のファーストクラスの利用を見直すと述べていた。
▼舛添氏の政治資金は、回転ずし店での飲食費や子供のパジャマ代にまで化けている。億の単位とは無縁のみみっちさが、かえって人々の関心をかきたてている。
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