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優しさが試される 4月18日

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2016.4.18 05:03

【産経抄】優しさが試される 4月18日

 『武士の家計簿』などで知られる磯田道史(みちふみ)さんは、日本の防災史をライフワークの一つにしている。磯田さんの母方の家系が、日本有数の津波常襲地である、徳島県牟岐(むぎ)町から出ているからだ

 ▼牟岐町は、昭和21年の昭和南海地震の際も津波に襲われた。当時2歳だった磯田さんの母親は、九死に一生を得ている。磯田さんは、1歳の女の子を亡くしたある母親の回想記に目を留めた。

 ▼放心状態のまま避難所に運び込まれた彼女に声がかかる。「寒いやろ。布団の中に入り」「私はズブぬれやけん、よごすけん」「かんまん、汚れたら洗ったらええけん」。「そのご好意がどれほどうれしかったことか」と、彼女は後に振り返る。磯田さんは、優しさが人に生きる力を与える例として、後世に伝えたいという(『天災から日本史を読みなおす』中公新書)。

 ▼「平成28年熊本地震」は、県外にも活動を広げ、被害を拡大させている。これまで亡くなった人の多くは、倒壊した建物による圧死だった。南阿蘇村のアパートにいた22歳の学生にも、天井が目の前に迫ってきていた。

 ▼学生は、手に持っていた携帯電話で、両親にこれまでの感謝の気持ちをつづった遺書を打ち始めた。「大丈夫か」。学生はその時聞こえてきた友人の声に励まされ、まもなく救助された。

 ▼避難所に身を寄せて、不安な日々を過ごす被災者のもとにも、ようやく全国から支援物資が届き始めた。自衛隊の派遣部隊は増強され、陸上自衛隊東北方面隊にも「東日本大震災の支援の恩返し」をする機会がやってきた。受け入れ態勢が整えば、ボランティアも続々と現地入りするはずだ。天災に苦しめられ続けてきた日本人ならではの、「優しさ」が試される時である。

 


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