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365日の区切りの「ひと休み」 元旦に抱く感慨 1月1日

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2016.1.1 05:03

【産経抄】365日の区切りの「ひと休み」 元旦に抱く感慨 1月1日

 明けましておめでとうございます。それにしても、お正月には、どんな意味があるのだろう。作家の井上靖さんは、「元旦に」という詩に書いている。

 ▼「人間の一生が少々長すぎるので、神さまが、それを、三百六十五日ずつに区切ったのだ。そして、その区切り、区切りの階段で、人間がひと休みするということだ」。昭和32年の元旦、50歳を間近にした井上さんが抱いた感慨だった。

 ▼「ひと休み」の1日、井上家には大勢の客が訪れて、酒宴となるのがならわしである。ある年の宴(うたげ)が終わり、最後の客を玄関で見送った後のことだ。何かの拍子に笑い始めた、4人の子供たちをひどく叱った。

 ▼「敷地を出るまで決して笑うな。客は自分のことを笑われたと思うから。ひょっとしたら、井上の家を恨むこともあるかもしれない。笑われる立場にない人は、自分が笑われたと思わない。しかし、世の中にはそうではない人もおり、邪気のない笑いが人を傷つけることがある」。ドイツ文学者の長男、修一さんが小紙に語ったエピソードである。

 ▼「文壇の紳士」と呼ばれた井上さんの気配りは、毎年秋の一夜にも発揮された。ノーベル文学賞の有力候補とあって、自宅前には大勢の報道陣が陣取った。「落選」が伝えられると、井上さんは外へ出てくる。「力及ばず、申し訳ありません」。元新聞記者の井上さんは“門前会見”で、ユーモアをまじえて「おわび」を繰り返すのだった。その後は、駆けつけた友人たちと記者を招き入れ、残念会の宴が深夜まで続いたという。

 ▼井上さんは果たせなかったが、今年も、日本人のノーベル賞受賞ラッシュを期待したい。もちろん、そんな初夢には、村上春樹さんの文学賞受賞も含まれている。

 


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