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ただ、実際に国軍が権力を手放し、「大政奉還」や「維新」が実現するかどうかは、予断を許さない。

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2015.11.10 05:05

【産経抄】ミャンマーの柳生一族 11月10日

 ミャンマーでは長年、軍事政権が続いてきた。と、書いても、日本人にはピンとこない。この国を何度も訪れている作家の高野秀行さんは、江戸幕府に見立ててきた。かつて、立法、行政、司法の一切の権利を握っていた武士に当たるのが、ミャンマーの軍人というわけだ。

 ▼最近まで維持してきた、鎖国政策も、幕府をほうふつとさせる。2004年に訪れたとき、どこに行くにも謎の男たちがついてきた。高野さんは、監視役だとにらんだ。送り込んだのは、幕府のために暗躍した柳生一族のような情報機関である(『ミャンマーの柳生一族』集英社文庫)。

 ▼そのミャンマーが、今や「東南アジア最後のフロンティア」ともてはやされ、外資の参入が相次いでいる。「開国」のきっかけとなったのは、11年の軍政から民政への移管である。以来初めてとなる総選挙は大きな混乱もなく、無事に投開票が行われた。

 ▼結果は、民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー氏(70)率いる最大野党、国民民主連盟(NLD)が大勝利のもようである。現大統領と、国軍の最高司令官は、選挙結果を受け入れる意思を明らかにしている。

 ▼ただ、実際に国軍が権力を手放し、「大政奉還」や「維新」が実現するかどうかは、予断を許さない。いずれにしても、スー・チー氏と、自身を長く自宅軟禁に追い込んだ国軍との「和解」が、焦点となる。

 ▼高野さんによると、監視役の男たちは意外にも、人なつっこくて、かなりドジな連中だった。酒の席では口が軽くなり、政治の話題でも本音を漏らした。「スー・チーは軍と、いっしょに政府を作らなければいけないよ」。彼らは、歴史的な選挙の結果を受けて、民主化の実現に手応えを感じているだろうか

 


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