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米中首脳会談:深まった米中間の戦略的「溝」 [◆論  評◆]

米中首脳会談:深まった米中間の戦略的「溝」

9つの見立て~中国株式会社の研究(269)

2015.9.28(月) profile 宮家 邦彦
以下抜粋

リベラル3紙の社説

●米中首脳会談―サイバー合意を一歩に(朝日新聞)

 米国と中国は、実に深い対立点を抱えつつも、現実的な共存の道を手探りし続けるほかない。そんな苦しい思惑が今回も色濃くにじんだ。かつてない緊張の中だったが、何とか進展を演出して終わった。

 (サイバー問題に関する合意について)これを第一歩として対話を進め、ネット空間での国際規範づくりを目指してもらいたい。

 習近平氏は、米中は「世界の平和に共通の責任を負う」と述べたが、その自覚を行動で示すべきだ。古い覇権思考から脱皮した21世紀型の大国像を米中双方が示してほしい。

【筆者コメント】

 米中関係が緊張するのは米中双方に問題があるためであり、米中ともに古い覇権思考から脱皮すべきだと説いている。また、サイバー空間における企業秘密情報窃取が日本にとっても重大な問題だ。それにもかかわらず、中国に対する懸念は語らない、どこか他人事のような社説である

●米中首脳会談 地域安定に責任果たせ(毎日新聞)

 中国が真に対立回避を望むなら行動を変えるべき時だ。南シナ海問題など対立する問題で米中両国が危機管理能力を示すことができれば、相互信頼の増大につながるし、国際社会の懸念も解消される。

 (日本で)安保問題では米国以上に中国脅威論が強調されるきらいがある。米国は・・・米中共存の未来をにらんだ布石もしっかりと打っている。日本はその方向性を読み間違えてはならない。

【筆者コメント】

 米中は共存に向けて関係改善が進んでいるのに対し、日本では今も「中国脅威論」が幅を利かしており、日本はそうした米中共存の方向性を読み誤るべきではないと説いている。だが、米中間のいったいどこにそのような「方向性」があるのか。説明が一切ない、勝手で思い込みの激しい社説である

●米中首脳会談 覇権ではなく協調を(東京新聞)

 (中国は)世界をリードする役割と責任を十分発揮できる大国としての印象を国際社会に与えることはできなかった。

 オバマ大統領の任期も残すところ1年余りだが、中国が国際社会の信頼を得られるよう働きがけを続け、アジアの安定でも、キューバとの復交、イラン核合意に並ぶレガシー(遺産)を残してほしい。

 太平洋はむろん、米中両大国だけのものではない。取り囲むすべての国の平和と繁栄の海にせねばならない。覇権をいうのは、もう古いのである。

【筆者コメント】

 中国が「責任ある大国」ではないと主張しつつ、オバマ政権に対しても対アジア・中国関係で「遺産」を残すよう求めている。しかし、キューバとの国交正常化やイラン核合意のいったいどこが「レガシー」なのか。この社説も前2紙と同様、米中双方に責任があるとの視点で書かれているようだ。

残り3紙の社説

 これに対し、残りの3紙の社説はいずれも、客観的な視点から中国の様々な問題点を指摘する、より現実を見据えた内容となっている。

●アジアの安定に懸念残した米中会談(日本経済新聞)

 あらわになったのは対立の根深さであり、中国から責任ある行動を引き出すことの難しさだった。

 目に見える成果はほとんどなかった。(南シナ海での)軍事施設の建設をやめさせるため、米国は中国への圧力を強めてほしい。

 習氏は(人権問題に関する)国際社会の懸念を真剣に受け止めるべきだ。中国は経済運営の透明性をさらに高めてもらいたい。

●米中首脳会談 「独善」で大国関係は築けない(読売新聞)

 中国が独善的行動で国際秩序に挑戦し続ける限り、自らが望む米国との「新しいタイプの大国関係」は構築できまい。

 問われるのは実際の行動だ。(サイバー)攻撃への関与を否定する中国が合意を本当に順守するのか、国際社会は注視しなければならない。

 中国の力による現状変更は看過できない。米国は、日本など関係国と連携して、中国に自制を促す必要がある。

 習氏は・・・市場原理を重視する考えを強調した。その言葉通り、国際ルールに則った透明性の高い改革を推進してもらいたい。

●米中首脳会談 南シナ海の懸念強まった(産経新聞)

 地域の平和と安定を乱す中国に対し、日米両国は周辺国とも緊密な連携を図りながら、さらに警戒を強めなければならない。

 米企業の知的財産などを狙う中国のサイバー攻撃を明確に位置づけた意味は小さくないが、合意の実効性は、中国側が具体的な行動を取るかにかかっている。

 習氏は米国との「新型大国関係」を改めて持ち出したが、世界の秩序を乱し、国際ルールを守らない国に「大国」を名乗る資格がないことを忘れてはなるまい。

【筆者コメント】

 いずれも今回の首脳会談で成果がなかった最大の理由は中国の無責任な行動にあると説いている。それにしても前半の三紙と後半の3紙で主張がかくも異なっているのはなぜだろうか少なくとも筆者には、同じ国の同じ日刊紙とは到底思えないのだが。


タグ:米中関係
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