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やがて台風や大雨のたびに氾濫を繰り返すことから、「鬼が怒る川」となる。

2015.9.11 05:04更新

【産経抄】
鬼は怒った 9月11日

 台風に伴う雨によって、多摩川の増水が続いていた。川沿いに住む元筑波大教授の横山十四男(としお)さんは、避難命令に従って、近くの中学校に移った。もっとも、すぐ帰れるだろうと、何も持ち出さなかった。

 ▼ところが夜になって、堤防が決壊する。横山家を含めた19家族のマイホームが、濁流にのみ込まれた。昭和49年9月の多摩川水害である。その様子は、テレビで中継されて全国に衝撃を与えた。映像はテレビドラマ『岸辺のアルバム』でも使われる。

 ▼台風18号から変わった低気圧の影響で、関東北部は昨日も激しい雨が降り続いた。茨城県常総市で起きた鬼怒川の氾濫は、周辺の住民に、避難する暇(いとま)さえ与えなかったようだ。自宅で取り残された人たちは、タオルのようなものを振って救助を待った。

 ▼電信柱にしがみついている人もいた。そこへ自衛隊のヘリコプターが駆けつけ、隊員が1人ずつ引っ張り上げていく。濁流は容赦なく住宅を押し流そうとする。時間との闘いである。テレビ中継の緊迫の映像に、息をのんだ。

 ▼かつて毛野国(けののくに)と呼ばれた地域を流れる鬼怒川は「毛野川」、あるいは穏やかな流れを表す「絹川」と呼ばれていた。やがて台風や大雨のたびに氾濫を繰り返すことから、「鬼が怒る川」となる。昭和22年に利根川を決壊させ、千人を超える死者を出したカスリーン台風、2年後のキティ台風は、鬼怒川流域にも大きな被害をもたらした。その後ダムが建設され、堤防の整備も進んだ。「鬼が怒らなくなった」との声も聞こえていたのだが。

 ▼千年に1度の東日本大震災だけではない。何十年に1度の規模の集中豪雨もまた、たびたび日本列島に襲いかかる。「想定外」という言葉は、もう誰も使わなくなった。


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