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。顔を左右に振ってでも、安い扇子でよしとする。万事がそんな発想では、息が詰まって仕方ない。

2015.8.30 05:02更新

【産経抄】
8月30日

 外は炎天、ある婦人が店で扇子を求めた。高価な品に安価な品、中間の品と3種ある。安い扇子を手に入れ、店を出た婦人は10分とたたず戻ってきた。顔を真っ赤にして言うには「すぐ壊れてしまったじゃないの」。

 ▼どんな使い方をしたのかと店主が問う。「当たり前でしょ。左右にあおいで…」「それはいけない。安い扇子なら顔の方を動かさないと」。洋の東西を問わず、安物買いはむしろ高くつくと、相場が決まっている。『頭がよくなるユダヤ人ジョーク集』(烏賀陽(うがや)正弘著、PHP新書)から引いた。

 ▼5年後の夏、人いきれで蒸した客席が目に浮かぶ。新国立競技場の整備計画は、予算が削りに削られた末、1550億円が総工費の上限となる。空調設備は無駄の一つとみなされ、カットされた。観衆はあおいで暑さをしのげるか。

 ▼総工費が無軌道に膨らんだ前の計画の反省であろう。開閉式の屋根も場内の商業施設も冷暖房も駄目と、政府は約1100億円分の無駄を省いた。では、そぎ落とした分を選手や競技団体のために回せたか、といえばそうでもない。

 ▼計画の6万8千席ではサッカーのワールドカップ(W杯)を呼ぶのに足りず、東京五輪の後、陸上トラックを新たに座席で覆う必要がある。可動式のいすは設置に100億円余りかかり、この時勢では「無駄」とたたかれよう。W杯を断念するか、安くて済む常設席を置き、陸上界が泣くしかない。

 ▼取り壊された旧国立競技場もこれでは浮かばれまい。ない袖を振れとは言わないが、必要なものに出し惜しみした結果、使う段になって「それはいけない」と、なりはしないか。顔を左右に振ってでも、安い扇子でよしとする。万事がそんな発想では、息が詰まって仕方ない


タグ:産経抄
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