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経済的な理由で、エアコンなしの生活を余儀なくされる高齢者がいることも、忘れてはならない。

2015.8.10 05:04更新

【産経抄】
エアコン嫌いにならないで 8月10日

 「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまひ)は、堪へ難き事なり」。『徒然草』の一節は、夏の暑さと懸命に闘ってきた、日本人の知恵の一例として、あまりにも有名だ。

 ▼もっとも、東京大学准教授の前真之(まさゆき)さんによると、この一節は、いわゆるエコハウスの設計に甚大な「害」をもたらしている(『エコハウスのウソ』日経BP社)。通風だけを重視した住宅が、量産されてきたからだ。

 ▼温度も湿度も高く、蒸し暑い日本では、空気をかき回すだけの通風や扇風機では限界がある。ピンチの時は、エアコンが唯一の命綱だと、前さんは言う。吉田兼好も平成によみがえれば、エアコンを利用するはずだ。

 ▼東京都内は、8日連続で35度以上の猛暑日が続いた。板橋区の民家では8日朝、90歳と86歳、82歳の3姉妹が室内で亡くなっているのが見つかった。いずれも外傷はなく、熱中症の可能性がある。エアコンは設置されていたものの、姉妹は普段から「エアコンが嫌い」と話していたそうだ

 ▼熱中症患者のおよそ半数は、65歳以上の高齢者である。厚生労働省では、扇風機とエアコンの適切な使用を呼びかけている。今や普及率が9割を超えるエアコンは技術革新が進み、過去20年間で、消費電力量と二酸化炭素の排出量が半減した。それでも、エアコンは苦手というお年寄りが、少なくない。

 ▼大津市の名神高速道路で先週、85歳の男性が運転する軽乗用車が、側壁にぶつかる事故があった。男性にけがはなかったが、熱中症と診断された。エアコンが故障して、窓を開けて運転していたという。経済的な理由で、エアコンなしの生活を余儀なくされる高齢者がいることも、忘れてはならない。


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