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「この一句に代表される恋愛至上主義が近代日本では多くの男女を金縛りにして悲哀の底に沈ませた」と批判する

2015.6.25 05:04更新

【産経抄】
恋愛に疲れた? 6月25日

 「恋愛は人世の秘鑰(ひやく)なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽(ぬ)き去りたらむには人生何の色味かあらむ」。詩人の北村透谷が、こんな書き出しの論文を発表したのは、明治25(1892)年だった。秘鑰とは、秘密の蔵を開ける鍵を指す。

 ▼恋愛をしないと人生の妙味はわからない、と言い切っている。なにしろ、人々は欧米から入ったばかりのLOVEの概念に戸惑い、恋愛という訳語をあてたばかりの時代である。衝撃は大きかった。

 ▼評論家の谷沢永一さんは、「この一句に代表される恋愛至上主義が近代日本では多くの男女を金縛りにして悲哀の底に沈ませた」と批判する(『人間通』新潮選書)。確かに、今もテレビドラマや映画、小説が、恋愛へのあこがれをかきたてている。そんな風潮に、疲れてしまったのだろうか。

 ▼内閣府の意識調査で、20~30代の未婚男女の4割が、「恋人は欲しくない」と答えていた。その理由でもっとも多かったのが、「恋愛が面倒」だった。だからといって、結婚も無理だと、決めつけないでほしい。昔に比べて廃れているだろうが、紹介や縁故に頼る方法もある。「結婚において出発点の経緯(いきさつ)など問題ではなく、一日一日の過程を賢明に生きる心働きに左右される」と谷沢さんはいう。

 ▼夫婦問題のコンサルタント、池内ひろ美さんによれば、1960年代から見合い結婚の件数を上回るようになった恋愛結婚には限界がきている。女性は20代後半で結婚相手を探し、いわゆる「自由恋愛」は、25歳までと45歳を超えてからがいい、と毎日新聞に書いていた。

 ▼身も蓋(ふた)もないアドバイスである。ただ20年以上にわたって、3万5000人を超える男女の相談に乗ってきた人だけに、説得力がある。


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