知識人がこぞって中国の文化大革命を称賛するなか、いち早く「権力闘争」の本質を見破った中嶋さんなら、そう言うだろう。
【産経抄】
中嶋さんの警告 4月23日
1955年4月、インドネシアのバンドンで開かれる第1回アジア・アフリカ会議の最後の準備に追われる関係者の、肝を冷やすような一報だった。会議に向かっていた中国の代表団の搭乗機が、空中爆発を起こしたというのだ。
▼爆弾を仕掛けたのは、台湾・国民党の情報員だった。中国は、この計画を察知していた。周恩来首相だけ別のチャーター機に移って、難を逃れる(『バンドン会議と日本のアジア復帰』宮城大蔵著)。
▼周首相は何食わぬ顔で、インドのネール首相らとともに、人種・諸国家の平等などを謳(うた)った平和10原則の採択に導いた。その活躍に刺激を受けて、中国研究を志したのが、当時浪人中だった中嶋嶺雄さんである。
▼しかし中嶋さんは、共産党一党独裁という政治体制への見方を変えていく。その軍事力の増強、人権弾圧に警鐘を鳴らし、日本の「対中位(くらい)負け外交」への批判を強めた。2年前に76歳で亡くなるまで、大学改革に情熱を燃やしつつ、「正論」欄に健筆をふるい続けた。
▼バンドン会議の60周年を記念する首脳会議が、ジャカルタで開幕した。中国の習近平国家主席は演説のなかで、欧米諸国と異なり、発展途上国への援助に政治的な条件を付けない、と述べた。参加国の「盟主」として、米国中心の国際秩序に挑戦する姿勢を鮮明にしたといえる。
▼中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーは57カ国に達した。その自信が、習主席の振る舞いに表れている。日本は浮足立つことなく、米国と足並みをそろえて、中国を牽制(けんせい)していけばいい。知識人がこぞって中国の文化大革命を称賛するなか、いち早く「権力闘争」の本質を見破った中嶋さんなら、そう言うだろう。
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