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まして、ちびっ子選手の両親に、「球が飛び出さないよう注意する義務があった」とする大阪高裁の判断は、社会常識から大きくはずれていた。

2015.4.10 05:04更新

【産経抄】
放課後の悲劇 4月10日

 ジャズ・ミュージシャンの坂田明さんは、広島県呉市にある海辺の村の出身である。小学生時代の一番の思い出は、自転車を買ってもらったことだ。放課後に早速、校庭で練習を始めた。

 ▼昭和30年ごろの小学校の校庭は、子供にとっての「解放区」だったという。何をして遊んでもよかった。「ガキどもが三角ベースの野球で走りまわるし、マリつきやゴム跳びをする女の子たちが、キャッキャッと黄色い声をあげる」(『瀬戸内の困ったガキ』晶文社)。

 ▼悲劇が起こったのは、それから50年後である。瀬戸内海をはさんで呉市の対岸にある、愛媛県今治市の小学校では放課後、子供たちがサッカーに興じていた。小学6年の男児が蹴ったボールが、門扉を越えて道路に転がり、オートバイの80歳代の男性がよけようとして転倒した。男性はその1年4カ月後に肺炎で死亡する。

 ▼遺族は男児と両親に賠償を求めて裁判を起こし、1審、2審はいずれも男児の過失を認め、両親に賠償を命じた。ところが最高裁はきのう、2審判決を見直して、両親の責任を否定した。当然の判決だろう。

 ▼プロの選手でさえ、フリーキックを大きくはずし、ボールを観客席に蹴り込むシーンは珍しくない。まして、ちびっ子選手の両親に、「球が飛び出さないよう注意する義務があった」とする大阪高裁の判断は、社会常識から大きくはずれていた。何でも親や学校の責任を問う風潮が強まれば、子供がボール遊びをする場所は、ますます限られてしまう。

 ▼もちろん、子供が起こした事故について、親が監督責任を問われる場合は、あり得る。信号を無視して、猛スピードで突っ込んでくる、小学生による危険極まりない自転車の運転は、その最たる例である。


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