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マルケとは、爆弾に主翼や尾翼を付けた一種のグライダーのような兵器だ。

2015.4.3 05:04更新

【産経抄】
特殊兵器マルケ 4月3日

 98歳で亡くなった東大名誉教授の近藤次郎さんの訃報記事が数日前、各紙に載っていた。毎日新聞の扱いがもっとも大きく、見出しには、「公害対策を推進」とある。

 ▼確かに、応用数学を駆使した大気汚染の予測の業績はよく知られている。国立公害研究所所長や中央公害対策審議会会長、中央環境審議会会長などの要職も歴任した。水俣病対策やダイオキシン類の排出基準の作成にも携わっている。実は聖心女子大で一般教育の数学を受け持ち、学生時代の皇后陛下を教えた、とのエピソードも持つ。

 ▼もっとも、専攻は航空工学である。41年にわたり飛び続け、182機が製造された戦後初の国産プロペラ旅客機「YS-11」の基本設計に参加して、座席数を決めたのは近藤さんだ。『飛行機はどう進化するか』といった一般向けの著書もある。

 ▼研究者としての原点は、「マルケ」と名付けられた特殊兵器だった。昭和19年に開発を命じられた近藤さんは、27歳の陸軍航空技術中尉だったマルケとは、爆弾に主翼や尾翼を付けた一種のグライダーのような兵器だ。

 ▼敵艦の放射する熱を感知して、自動操縦で命中する。現在の無人兵器の先駆けかもしれない。マルケを搭載した爆撃機は、敵の船団の上空まで達する必要がない。対空砲火で打ち落とされる危険が少なく、安全の度合いは飛躍的に上がるはずだった。

 ▼近藤さんは17年から2年間、東京陸軍少年飛行兵学校で数学の教官をしていた。マルケが完成すれば、彼らの命を救うことができる。既に、神風特攻隊の攻撃が始まっていた。近藤さんたちは寝食を忘れて、設計と製造に取り組み、テストを繰り返した。実用化のめどがようやくついたのは、終戦の5日前だったという。


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