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遼太さんのこれからの人生では、劇中歌の通りの場面が何度も訪れるはずだった。周囲の大人たちは、そんな光り輝く命を守ってあげられなかった。

2015.2.26 05:05更新

【産経抄】
不思議な仲間たち 2月26日

 東京で生まれ育った勇太は小学6年のとき、父親を事故で失い、母親の故郷である東北の山村に引っ越してきた。村人たちはなぜかウを抜いて「ユタ」と呼び、子供たちは「東京のモヤシっ子」を仲間はずれにする。

 ▼そんなある日、古い旅館の離れで座敷わらしと出会った勇太は、彼らと交遊を重ねるうちにたくましく変身していく。『ユタと不思議な仲間たち』は、東北出身の作家、三浦哲郎さんが創作童話として書き下ろしたものだ。劇団四季のミュージカル公演は、すでに1300回を超えている。

 ▼多摩川河川敷で帰らぬ姿となっていた、中学1年の上村遼太さん(13)は、5歳からの6年余りを島根県の隠岐諸島、西ノ島で過ごしている勇太とは逆に、小学6年のときに、母親とともに川崎市に移ってきた。

 ▼フェリーで島を離れる時、港には友人ら約70人が集まっていた。「遼太がんばれ」の横断幕を掲げ、「フレー、フレー」と声を張り上げて、見送ったという。人口約3000人の島で、よほど人気者だったのだろう。

 ▼ミュージカルでは、座敷わらしのリーダーが、勇太に命の大切さを諭す場面がある。遼太さんが昨年から関わりをもっていたのは、そんな「不思議な仲間」とは、異質のグループだった。万引を強要され、目の下が変色するほど殴られたこともあったらしい。今年に入って不登校を続けていた遼太さんが、学校に行こうとして、グループとトラブルになった可能性もある。

 ▼「生きているって すばらしい 今日から明日へ 希望がつづく」(岩谷時子作詞)。遼太さんのこれからの人生では、劇中歌の通りの場面が何度も訪れるはずだった。周囲の大人たちは、そんな光り輝く命を守ってあげられなかった。


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