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沢木さんは、島を「クガネ(黄金)の島」と呼ぶおばあちゃんに出会っている。そんな輝きが取り戻せればいい。

2015.2.24 05:06更新

【産経抄】
クガネ島 2月24日

 作家の沢木耕太郎さんが与那国島を訪れたのは、昭和47年に沖縄が本土に復帰してまもなくの頃だ。日本最西端の島周辺で、台湾漁船による「領海侵犯」や「不法上陸」「密輸」事件が相次いでいると聞いて、興味を持った。

 ▼ところが、そんな物々しい事件ではなかった。台湾漁民が、せっけんやたばこ、ビールなどの買い物をしただけだった。つい最近まで、与那国と台湾の漁民は、海の上で魚を交換することも珍しくなかったらしい(『視えない共和国』)。

 ▼本土はもとより、沖縄本島よりも距離が近い台湾とは、戦前から結びつきが強かった。終戦直後の一時期には、密貿易で大いに栄えた。「ケイキ時代」と呼んで懐かしむ島民たちは、47年の日中共同声明に伴う、台湾との断交に大きなショックを受けたという。

 ▼人口減少、特に高校がないために若者が島を出てそのまま帰らない。現在、島が抱える最大の悩みは、当時と変わらない。大きく変わったのは、周辺海域の状況である。島は、中国軍の航空機や艦船による挑発的活動が激しくなるばかりの尖閣諸島から150キロしか離れていない。台湾の選挙をめぐって、中国がミサイルで威嚇し、漁場に行けなかったこともある。

 ▼実は、島に自衛隊の配備を求める声は、沢木さんが訪れた頃から上がっていた。以来40年あまりの紆余(うよ)曲折を経て、来年春には、陸上自衛隊の配備が完了する。賛否を問う住民投票でも、賛成が多数を占め、障害が取り除かれた。陸自のレーダーが、中国軍の乱暴を抑止し、移り住む隊員約150人と家族が、島ににぎわいをもたらす。

 ▼沢木さんは、島を「クガネ(黄金)の島」と呼ぶおばあちゃんに出会っている。そんな輝きが取り戻せればいい。


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