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「起きて半畳寝て一畳、天下取っても二合半」

2015.2.15 05:02更新

【産経抄】
2月15日

 会社の禄をはむ身に、安息の日々はないらしい。何年か前、僚紙夕刊フジ(東京版)のビジネス川柳に秀句があった。〈窓際と言うな今では奪い合い〉。西日が目にしみる年齢はまだ先でも、座席の確保に目を血走らせる御仁(ごじん)は多いかもしれない。

 ▼宝くじに、つかの間の夢を託す人もあろう。お叱りを受けるのを覚悟で、フランスの哲学者アランの言葉を引いてみる。「想像した幸福はけっしてわたしたちの手に入らないことは、確かだ」(『幸福論』白井健三郎訳、集英社文庫)。ごく一部の果報者を除いて。

 ▼幸せの象徴とされる「青い鳥」が、日本で見つかったようだ。日立製作所などが、幸福の量を測定する技術を開発したという。うなずく動作やタイピングなど、人の幸福感に関連する細かな動きを、身につけた端末が感知して「ハピネス度」なる数値に置き換える。

 ▼調査では、「ハピネス度」が平均値を上回った集団で、業務効率が3割以上も跳ね上がったそうだ。人間行動の膨大なデータに裏打ちされた理論といい、職場環境を改める一助になろう。幸福感の要素に「理想の上司」の有無が関与しているかどうかは、聞かずにおく。

 ▼骨身を削る企業戦士にとっては、はしごを外された思いかもしれない。評論家の福田恆存(つねあり)は、幸福になる道を「たった一人の孤独なたたかい」と書いた。時間に追われノルマと格闘しながら成し遂げた大仕事の後に、より多い幸福感が得られんことを願うほかない。

 ▼企業戦士にほど遠いわが身は「起きて半畳寝て一畳、天下取っても二合半」と達観、諦観を心得たつもりでいる。日々の欲得はなお首をもたげるものの、今さら高望みする年でもない。肩の凝らん(コラム)程度でよし、としておく。


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