そもそも未熟な研究者の論文をろくに検証もせず、大々的に発表した責任の過半は、理化学研究所にある。
【産経抄】
12月20日
ちょっとした割烹(かっぽう)着ブームが起きたのは、まだ今年だったのが、信じられないほど遠い昔のような気がする。祖母からもらった割烹着で実験を重ねた若手女性研究者が、ノーベル賞級の発見をした、と権威アル研究所が発表したとあって小欄も信じ込んでしまった。
▼18日付朝刊でお伝えした通り、理化学研究所の小保方晴子研究員が参加した検証実験で、STAP細胞は作製できなかった。当初、発表をうのみにして、ないものをあるかのように報じた不明を恥じ入るばかりである。
▼疑惑が発覚してからも「STAP細胞は、ありま~す」と言い張った彼女の根性は、ご立派だった(もちろん、皮肉である)。モニターで監視され、立会人を置いて行われた検証実験に「魂の限界まで取り組んだ」のも立派だった(こちらは、皮肉ではない)。
▼検証実験の責任者が、「研究者を犯罪人扱いしての検証は、あってはならない」とわびたほど、現場は過酷だったようである。彼女には自分の口から過ちを認めてほしいが、それは心身の回復後でいい。
▼ただし、問題は、終わったわけではない。反省しているようには、とても見えないご仁もいる。「前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています」と、彼女について人ごとのようなコメントをした野依良治理事長である。そもそも未熟な研究者の論文をろくに検証もせず、大々的に発表した責任の過半は、理化学研究所にある。
▼あの朝日新聞でさえ、慰安婦報道をめぐる問題や福島第1原発事故の「吉田調書」誤報の責任をとって社長が辞任した。野依氏は偉い学者さんではあるが、トップリーダーとしての身の処し方は、ノーベル賞をとっても身につかないようである。
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