【産経抄】やくざ撃退 10月3日
【産経抄】
やくざ撃退 10月3日
故伊丹十三監督が、自宅前で襲撃され重傷を負ったのは、平成4年5月だった。暴力団を徹底的に批判した映画「ミンボーの女」が、公開されてまもなくのころだ。果たして半年後、警視庁に逮捕されたのは暴力団幹部ら5人だった。
▼「民暴」とは、暴力団が一般市民の民事的紛争に介入して、不当な利益を得ることを指す。映画のなかで、主人公のミンボー専門の女性弁護士が、暴力団に食い物にされてなすすべもない一流ホテルの幹部を前に、熱弁をふるうシーンがある。
▼「毅然(きぜん)と対決すべきです。脅しには屈しない。いわれのないお金は払わない」。ヤクザ撃退策を徹底的に調べ上げた、監督からのメッセージであったろう。映画の公開は、暴力団対策法の施行とも重なっていた。犯行の動機は、監督への反発だけではない。暴力団追放の機運の高まりに対する挑戦といえた。
▼その後も着々と、法の整備は進んできた。にもかかわらず、企業や民間人が暴力団の標的になる事件が、後を絶たない。なかでも北九州を拠点とする工藤会は、「最も凶暴なヤクザ」と恐れられてきた。
▼福岡県警は先月から、全国の警察からの応援を得て、唯一の特定危険指定暴力団に対する「頂上作戦」を開始している。トップとナンバー2の逮捕容疑は、平成10年に元漁協組合長の男性が射殺された事件への関与だった。続いて、昨年1月に女性看護師が切りつけられた事件でも、幹部15人の強制捜査に乗り出している。
▼「警察は、民主主義を守る砦(とりで)であるという理念を高く掲げてもらいたい」。伊丹監督は、襲撃犯が逮捕された後に行われた警察庁刑事局長との対談で、警察に注文していた。それに応えて、是が非でも壊滅に追い込んでほしい。
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