世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
中国を安全保障上の課題と見なし始めた欧州
2021/06/03
岡崎研究所
5月22日、英国空母クイーン・エリザベス号は、英南部のポーツマス港を出発した。7か月間、40か国を訪問する予定で、日本にも寄港する。
空母クイーン・エリザベス号の出発に先立つ5月19日付の英フィナンシャル・タイムズ紙では、同記者のKathrin Hilleが、インド太平洋地域は欧州にとって当然に利害のある地域ではないとする論説を掲げている。
確かに、インド太平洋地域は、欧州にとって当然に利害のある地域ではないかもしれない。が、最近、欧州において同地域への関心が高まっていることは事実である。ただ、関心の度合いは国によって異なる。
フランスは、仏領ニューカレドニアやタヒチがあり、太平洋島嶼領域で世界最大の排他的経済地域を持っており、関心が高いのは当然である。マクロン大統領が2018年5月にオーストラリアを訪問したとき、インド太平洋戦略の概要を発表している。続いてドイツが2020年9月に、オランダが2020年11月にそれぞれインド太平洋戦略を発表している。イギリスは、かつてインド太平洋地域に多くの植民地を持っており、地域とのかかわりが歴史的に強い。このような個々の国の関心の他に 、EUとしても、今年4月19日のEU外相会議で、インド太平洋戦略を討議した。9月に戦略の具体案を取りまとめると報じられている。