【日本人の心 楠木正成を読み解く】第3章 維新回天の原動力(7)
■正成に殉じた西郷の生涯
西郷南洲顕彰館(鹿児島市)の元館長、高●(たかやなぎ)毅氏は約10年前、西郷隆盛の漢詩『湊川感懐』の墨蹟(ぼくせき)を見つけ、ネットオークションで競り落とした。西郷の直筆で、積年の疑問に答えをくれる漢詩だと直感したので、競り値が65万円近くになってもポケットマネーをつぎ込んで、競売から下りなかった。
『湊川感懐』は、西郷が楠木正成(くすのき・まさしげ)に自らを重ね、詠んだ漢詩だ。朝廷にはびこる俗臣たちを嘆く内容も含まれているので、西郷が明治の維新政府に失望して下野した後の明治7(1874)年ごろの作品である。
〈王家萋棘古猶今 遺恨千秋湊水潯 願化青蛍生墓畔 追随香骨快吾心〉