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【解答乱麻】「一湯同心」の体験通し伝える 開善塾教育相談研究所所長・藤崎育子



 東北に10年来通う温泉宿がある。障子越しに隣室のテレビの音や話し声、廊下の足音が自然に耳に入ってくる。まるで田舎の祖父母宅に帰ってきたような感じだ。共同炊事場では食事時、みそ汁の香りが漂い、見知らぬ者同士も言葉を交わす。


 隣室のおばあちゃん3人組は田んぼ仲間。御年86歳。田植えが終わったので湯治に来たという。かくしゃくとした外見から想像できない実年齢に驚くと、「昔と違って機械がやってくれるでね。楽なもんだよ」とにっこり。稲刈りの後と雪の季節、年に計3回湯治に来る。4泊5日分の献立を考え準備するのも頭を使うからいいのだという。


 長年働いてきた世代の生きざまに触れると、人生の豊かさとは何か考えさせられる。


 私も長年群馬で不登校やひきこもりの青少年たちと合宿を行ってきたが、楽しみは何といっても食べることと温泉である。


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