(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
安倍晋三元総理の暗殺事件は、当初、暴力が民主主義に戦いを挑んだとする論評が多かった。民主主義への挑戦、民主主義の否定がこの暗殺事件だと断じる見解である。だが容疑者のこれまでの取り調べでは、日本の民主主義を崩すために安倍氏を狙撃したというような動機はまったく浮かんでいない。
この事件がまず強烈に明示したのは、今の日本ではこれほど有力な政治家も暗殺を防げないという国内治安の欠陥だった。
(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
安倍晋三元総理の暗殺事件は、当初、暴力が民主主義に戦いを挑んだとする論評が多かった。民主主義への挑戦、民主主義の否定がこの暗殺事件だと断じる見解である。だが容疑者のこれまでの取り調べでは、日本の民主主義を崩すために安倍氏を狙撃したというような動機はまったく浮かんでいない。
この事件がまず強烈に明示したのは、今の日本ではこれほど有力な政治家も暗殺を防げないという国内治安の欠陥だった。
(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
あるネット記事の見出しが目に入ってきた。
「陰鬱な世界情勢、ニュース離れを加速」という見出しである。それを見た途端、やっぱりそうか、日本の若者はウクライナの悲惨さやコロナ関連の陰鬱なニュースが嫌になっているのだな、と思った。
無理もない。若者よりいくらかは戦争・破壊・虐殺といった内容に耐性のあるわたしでさえ、ここ2か月ほど、ウクライナに関するニュースには嫌気がさしており、避けるようになっているからである。とくにロシア側の一方的な殺戮のニュースや、身勝手な言い分や嘘の言い訳を聞かされると、気分が冷え込み、嫌になるのだ。また真偽不明な様々なニュースにも翻弄され疲れる。
安倍晋三元首相の暗殺死について、「言論の自由の封殺」「民主主義への挑戦」との指摘があるが、見当違いだ。他の政治家やジャーナリスト、言論人を狙ったのなら、そうした抽象的な指摘も成り立とうが、他ならぬ安倍氏をこの世からなき者にした犯行だ。
「日本や世界から指導者を奪った蛮行」というべきなのだ。ここにも安倍氏の存在を軽く認識していたことが表れている。
しかし、世界の認識は違う。
2021年度一般会計決算は、税収が前年度比10・2%増の67兆379億円と過去最高になった。一方、歳出では22兆円余りの予算執行を22年度に繰り越すと報じられている。国は予算の出し惜しみをしているのか。適切な使い道はないのか。
予算は、原則として年度内に使い切ることとなっている。使い切れなかったものは、予算を計上したものの結果的に使う必要のなくなった「不用」となるか、一定の手続きにより次年度への「繰越」となる。
岸田文雄首相(自民党総裁)は参院選の大勝を受けて、8月下旬にも内閣改造・党役員人事を行う。党内基盤を着実に固めたい意向だが、最大派閥を率い、「岩盤保守層」の強い支持を得てきた安倍晋三元首相の死去が影を落とす。日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、リベラル色がにじむ岸田政権には不安・懸念があるのだ。「岸田カラー」を前面に出した人事を強行すれば、岩盤保守層の反発を招きかねない。国政の焦点である「憲法改正」や「防衛力強化」は大丈夫なのか。安倍氏の葬儀は12日午後、東京・芝公園の増上寺で営まれる。岸田首相の人事手腕が注目される。
8日、奈良市内で参院選の応援演説中に凶弾に倒れ、死去した安倍晋三元首相。前日の7日夜には岡山市内で、岡山選挙区から出馬した自民党の小野田紀美参院議員(39)の応援演説を行っていた。約10分間にわたり、安倍氏が語った経済や安全保障、日本の未来への思いを詳報する。
7日午後7時すぎ、岡山市民会館に登壇した安倍氏は「今日は七夕、晴れましたよね。やっと織姫に会いに来ることができました。彦星は私1人かと思ったんですが、昼間には岸田(文雄)総理が応援に駆け付けました」とユーモアを交えて演説を始めた。