前回はロシア情報機関の暗殺工作について概観したが、今回は工作のもう一つの柱である「積極工作」(アクティブ・メジャーズ)について見ていこう。

 これは「誘導工作」や「影響力工作」とも称されるが、端的に言えば、対象国の文化や社会背景などを吟味した上で、真実の中に偽情報を埋め込み、効果的なタイミングでそれを漏洩・拡散することで相手を混乱、弱体化させることを狙いとするものである。

 元々はプロパガンダ工作の一種とされているが、相手の悪口を広めるやり方だと真実味に欠けるため、本当のような嘘の話を巧妙に作り出し、それを絶妙なタイミングで世に広めるというやり方で、相手の世論を混乱させるのである。

日米関係悪化を企図し
各新聞社に協力者 

 通常、情報機関が相手の機密を得た場合、それは分析・評価され、政策決定や国防戦略に活用される。しかし、機密情報を得られることは稀であり、そのほとんどは公開されている情報、よくても機密の断片や過去のものということが多い。だがソ連の情報機関は使い道のない機密に目を付け、そこに偽造文書を付け加えることで、「本物の」機密を造り出し、それを公の目に晒すのである。

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