レバノンでは、8月4日に発生したベイルートでの硝酸アンモニウムの大規模爆発を受けてディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれるなど、混迷を深めている。レバノンの統治不全は極めて根が深い。8月12日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Lebanon needs a credible government of reform’は、レバノンの支配層が彼ら自身の将来が危機に瀕していることを自覚しない限り、レバノンは破綻国家に近づくだろうと述べているが、決して誇張とは言えない。

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 レバノンの現状は悲惨である。現地通貨のレバノン・ポンドは2019年秋以降80%減価し、最新で約90%のハイパーインフレとなっている。2020年3月にはディアブ首相が外貨建て国債12億ドルをはじめとする同国の債務の支払い停止、すなわち債務不履行を宣言した。ベイルート首都圏で91万人が食料や生活必需品を十分入手できない状態で、その半数以上を占める子供たちが年内に餓死する可能性があるとのことである。

 このような状況の下、昨年10月政府が増税案を示したことに対し大規模なデモが発生し、その後ベイルートのみならずレバノン中で国民の抗議デモが頻発したが、8月4日ベイルートで起きた硝酸アンモニウムの大爆発で163人が死亡、6000人が負傷する事態を受け、8月8日には数千人規模のデモが起こり、ディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれた。

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