米インド太平洋軍司令官デイビッドソンは、米国のインド太平洋戦略は、中国の攻撃性を抑止するためにあると、シンガポールのシャングリラ・ダイアローグの際に説明した。米国の対中競争政策は、米中両国が衝突するためではなく、逆に、衝突を回避するためのものであるというデイビットソン司令官の説明は、良く理解できる。中国の攻撃的行動はチェックする必要があり、そのために中国を抑止することが必要になる、それが対中競争政策だということである。

(donfiore/franhermenegildo/Thomas Northcut/iStock)

 

 ここで問題となるのは、中国の攻撃的な振る舞いと長期戦略に基づく影響力の世界的拡大である。中国が米国の競争者であるとの考え方は、トランプ政権になり、2017年の米国家安全保障戦略等で打ち出され、米国の対中基本姿勢が大きく変わった。これは必要な政策であったし、歓迎すべき転換でもあった。 

 しかし、その戦略の実施は、トランプの個人的な手法や政治的計算等の関与を得て、トランプ化が進み、問題が大きくなっているように見える。福岡での G20蔵相・中銀総裁会議でも多くの国が自国経済に影響する中心的問題として、米中貿易交渉の成り行きに懸念を示したという。米中関係が世界各国の経済に大きなリスクになってきている。 

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