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 韓国の熟年層以上の人であれば誰でも知っている『断腸のミアリ峠(단장의 미아리 고개)』という歌がある。朝鮮戦争(1950-1953)から3年後の1956年に発表され大ヒットした歌で、韓国において長い間、愛されてきた「国民歌謡」の中の一つだ。この曲が愛された理由は、その歌詞の「リアルさ」が韓国民の心に響いたからだ。次のような歌詞である。

Youtube: https://youtu.be/zeHIg6NBb6c

「断腸の彌阿里(ミアリ)峠」

断腸の彌阿里峠
あの人が越えて行った 別れの峠
火薬の煙が前を塞ぎ、目を開けず さまようとき
あなたは有刺鉄線で二つの手をしっかりと結ばれたまま
振り返り また 振り返り 裸足の足を引きずりながら
連れていかれるこの峠 恨みの多い 彌阿里峠

韓国歌謡「断腸の彌阿里峠」(1956)
作詞:半夜月 作曲:李在鎬 歌:李海燕

 ミアリはソウルの東北部にある地名で、過去には北朝鮮とつながる道があった。北朝鮮は朝鮮戦争でソウルへ侵攻するときも、後退するときも、ここを通って移動した。歌詞の内容は朝鮮戦争中にソウルを占領していた北朝鮮軍が連合軍の反撃に遭い後退していくときに、ソウルから政治家、学者、技術者、宗教家、芸術家、などを大勢、強制的に北に連れて行ったのだが、そうして連れていかれる人の心情を歌ったものだ。まさに「強制連行」の被害を歌っているものだ。

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