【産経抄】10月20日
まず民主党から出馬し、選挙区で落選して比例代表で復活当選を果たす。その後、日本維新の会に移り、そこで2回、比例復活当選後に民進党結党に参加し、希望の党から立候補してやはり比例復活当選する。そして国民民主党結党に加わり、現在は立憲民主党会派入りを模索している。
▼誰とは言わないが、ある野党系衆院議員の政治行動である。歳月の中で政治家の考え方や政治信条も移ろいゆくものかもしれないが、それにしても変節が過ぎないか。国会議員にとって、政党とはいったい何だろうかと考えてしまう。
▼公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法、政党法人格付与法…と、政党要件にかかわる法律はあるものの、日本には肝心の「政党法」がない。政党の位置づけが曖昧であることが、有権者を愚弄するような政治家の動きを招く。
▼平成8年9月のことである。旧民主党を結成して厚相を辞任するという菅直人元首相に対し、薬害エイズ訴訟原告団の川田悦子さんが「新しい政党といっても理念もない」と迫ると、菅氏は言い放った。「政党なんて、そんなもんですよ」。
▼24年11月、当時の細野豪志民主党政調会長は新党の設立が相次いでいることについて、こう牽制(けんせい)していた。「単に(政党が)離合集散の手段になる可能性すらある。これはまずい。ゆくゆくは政党法があった方がいい」。その細野氏も今は、政党の枠をはみ出して無所属である。
▼国民の税金で支払われる政党交付金は、1年で約320億円にもなる。にもかかわらず、政党はあやふやな存在であり続けている。秋の臨時国会で野党は、またもや「モリ・カケ」問題を徹底追及するという。だが、それより足元を見直し、政党法の議論でも開始したらどうか。