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「自然の洞窟は、知識、経験のない人が安易に入ると、アクシデントが起きても、どう対応していいのかわからない」

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【産経抄】7月5日

 フランス南西部の小さな村で、世紀の発見がなされたのは、1940年9月である。村の少年が愛犬と散歩していると、犬が倒木の下の穴に落ちてしまった。引っ張り上げようとして、穴の先に洞窟が広がっているのに気づく。

 ▼数日後、友人3人とランプを手に入ってみると、壁一面に描かれた絵に目を奪われる。数百頭もの動物が今にも動き出しそうだった。約2万年前の旧石器時代に、現代人と同じホモ・サピエンスに属するクロマニョン人によって描かれたものだ。世界遺産にもなっている、ラスコーの洞窟壁画である。

 ▼ラスコーの洞窟は200メートルほどの奥行きしかない。タイ北部にあるタムルアン洞窟の全長は10キロ以上もあるそうだ。この洞窟で行方不明になっていた地元サッカークラブの少年12人と男性コーチ(25)の無事が、9日ぶりに確認された。13人は洞窟に入った後、大雨による増水で出られなくなった。

 ▼入り口から5キロほどの地点で避難している少年らの手前には、泥水が大量にたまっている場所が何カ所も続く。困難きわまる救出作業には、タイ海軍の特殊部隊のほか、日本を含めた各国の専門家も参加している。

 ▼洞窟探検家の吉田勝次さんは、国内外の千以上の洞窟に入った経験を持つ。著書の『素晴らしき洞窟探検の世界』のなかで、洞窟の魅力を語りつつ、こんな指摘も忘れない。「自然の洞窟は、知識、経験のない人が安易に入ると、アクシデントが起きても、どう対応していいのかわからない」「事故があった場合は、地元の人を中心に本当に多くの人に迷惑がかかってしまう」。

 ▼今は13人の一日も早い帰還を祈りたい。家族と喜びの再会を果たした後、引率のコーチにはきついお叱りが待っているだろうが。


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