松平春嶽

(町田 明広:歴史学者)

幕末維新史における特異な存在

 幕末維新をいつからいつまでとするのかは、難しい問題である。仮に、嘉永6年(1853)のペリー来航から明治4年(1871)の廃藩置県とした場合、その期間を通じて活躍した人物を挙げることは至難の業であろう。明治期を除いて、ペリー来航から鳥羽伏見の戦いに限定しても、挙げることは容易ではない。

 そのような中で、ほぼその全期間を通じてキーマンであった人物の一人は、松平春嶽(文政11年9月2日(1828年10月10日)~明治23年(1890年)6月2日)ではなかろうか。今回は、その春嶽にフォーカスし、彼が成し遂げた事績を取り上げるとともに、それを可能にした徳川一門としての華麗なる血統の秘密に迫ってみたい。

>>続きを読む