ロシアによる「ウクライナ侵攻」の行く末は想像しがたいところだが、これが世界の食料需給に与える影響について幅広く検討し、さらに、わが国の食料需給に与えるインパクトと対応を予想して将来に備えることは極めて重要である。

 とくに、戦火の広がりと期間により、①一時的な集出荷・輸送の停滞、混乱(短期)、②本年の収穫への影響(中期)、③労働力や投資の停滞で生産水準そのものの低下・減産(長期)を念頭に、現下の食料需給と今後の対応方向に関する論点を整理しておきたい。

(Andrii Kozlytskyi/gettyimages)

ウクライナ、ロシア、世界の穀物の需給と価格

 ウクライナは、米国とカナダのプレーリー、アルゼンチンのパンパと並び、「世界三大穀倉地帯」と呼ばれ、「欧州のパンかご」、「世界のパンかご」とも称される。かつて第一次世界大戦の「総力戦・経済封鎖」で「カブラの冬」を経験したナチスドイツでは、きわめて肥沃な黒土のあるウクライナが垂涎の的であったと伝えられるほど豊かな地域である。穀物の輸出量は、年によって順位は変動するが、小麦の輸出では第5位、トウモロコシでは第4位の辺りに位置する。

 ちなみに、旧ソ連は、1980年代までは、穀物相場を左右する「大輸入国」であった。小麦とトウモロコシを合わせた年間の輸入量は、平均3500万トンあった。

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