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 日本はなぜ対米開戦に突き進んだのか。軍国主義の時代、影響力を強めた軍が国民を戦争へと引きずり込んだと考えている人も多いようで、確かにそういう面もあるが、それだけでは歴史の単純化にすぎない。歴史は点ではなく線から読み解かねばならない。

 その意味で、「1930年代の危機」を20年代の終わりから41年までの期間として丁寧に振り返る必要がある。国内的背景、国際関係的背景の2つから、見ていきたい。

中国の長春には満州国国務院(写真中央、現・吉林大学)などの建築物が今も残る。満州事変以前、23万人の在満邦人の処遇が日中間の問題となっていた (TONY SHI PHOTOGRAPHY/GETTYIMAGES)

 まず、国内的背景について、重要なことは軍人台頭の社会的背景としての軍人の不遇ということがある。31年の満州事変以前の日本では、軍人の社会的地位は非常に低いものだった。約1600万人の死者を出した第一次世界大戦により戦後世界の世論では反戦・平和主義が非常に強い力を持つことになり、海軍の軍縮条約に続いて陸軍でも大規模な軍縮が行われ、約9万6400人の人員削減が行われた。

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