最近、国際問題関連のニュースで「ファイブ・アイズ」という単語を聞くようになった。私自身は2010年ごろから使用していたが、一般的に使われるようになってからはまだ日が浅い。ただ「エシュロン」という言葉なら聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれない。エシュロンは2000年前後に日本でも話題となった。だがこれはファイブ・アイズ諸国が行う作戦名の一つであり、その後、ファイブ・アイズの方がより正確だと認識されるようになり、現在に至っている。

 ではファイブ・アイズとは何だろうか。これは米英加豪ニュージーランドの、英語を母国語とする5カ国のインテリジェンス同盟のことである。5カ国は協力して世界中の電波、サイバー空間から日々情報を収集しており、一般にこれを「通信傍受」と呼ぶ。インテリジェンスの世界で最も秘匿度の高いのがこの通信傍受の世界だ。

 スパイ活動や偵察衛星の世界も秘匿度は高いが、どれが一番秘匿されるべきかというとやはり通信傍受になる。この領域は暗号を扱っており、これが秘中の秘とされるためだ。歴史を振り返れば、通信傍受と暗号解読に成功したものが外交や戦争を制してきた経緯もある。恐らく凄腕のスパイよりも、暗号解読によって歴史をひっくり返した事例の方がよく知られているのではないだろうか。代表的なのが、1942年6月のミッドウェー海戦だ。当時劣勢にあった米海軍は暗号解読によって日本海軍を待ち伏せする作戦でこの戦いに大勝利し、その後の太平洋戦争の趨勢を決定づけた。

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