ショッピングセンター「大和リバーサイドタウンPio」の全景

(鶴岡 弘之:JBpress)

 いやだ、いやだ。また今日も憂鬱で絶望的な1日が始まる。嶋﨑広(しまざき・ひろし)さんは仕事に出かけるのが苦痛で仕方がなかった。

 嶋﨑さんの仕事はメガネ屋の店員である。父親が始めたメガネ屋「シマザキメガネ」で働いている。岐阜県郡上(ぐじょう)市の「大和リバーサイドタウンPio(ピオ)」というショッピングセンターの中にあるメガネ屋だ。仕事は面白くない。土日も働かされるし、給料も安い。気に食わない客もやって来る。この間も不愉快な客が来たからいい加減な態度で接していたら、父親がその客に病院で会って「あんな馬鹿がやってたら、すぐにつぶれる」と言われたらしい。父親は自分のことをまったく使えない奴だと見限っているに違いない。

 なにしろここは田舎すぎる。日が暮れたらどこも真っ暗。レストランもない。カラオケ屋もない。あるのはコンビニだけ。こんな田舎の弱小小売店に未来があるわけがない。一刻も早くこの毎日から逃げ出したい。

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