再度問うと書いたが、最初に「電力自由化がもたらす天国と地獄」を掲載したのは、World Energy Watchの連載の中でのことだ(『電力自由化がもたらす天国と地獄 破綻する電力と儲かる電力の違いは何か?』)。電力市場自由化を主要国中もっとも早く進めた英国の電力小売り会社が、電力の卸市場価格の上昇に耐えられず破綻した背景を4年前に説明した。自社の発電設備を持たない小売り会社が卸価格の上昇に耐えられず破綻するケースは、英国ではその後も起こっている。

 いま、日本では電力自由化を受け新規参入した新電力と呼ばれる小売事業者の一部が導入している市場連動型料金プランによる電気料金高騰が問題になっている。英国では以前から起きている自由化に伴う小売りの問題が、日本でも出てきたということだ。英国では6年前に導入された容量市場が日本では昨年導入された。まるで英国の4、5年遅れで自由化に伴う問題が表れているかのようだ。

(NiseriN/gettyimages)

電力の卸市場

 いま、日本に約700社ある新電力の多くは発電設備を保有していない。設備を保有している企業は20社に1社程度だ。設備を持たない新電力は、小売りのための電力の仕入れを企業が持つ自家発設備などに依存し相対の契約を締結するか、あるいは、かつて一般電気事業者と呼ばれていた大手電力などが余剰電力を供給する電力の卸市場、日本卸電力取引所に依存するしかない。卸市場では翌日の電力供給量を売り手が提示し、買い手が必要量を提示することで価格が決定される。

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