この記事は、『Wedge』12月号(2020年11月20日発売)に掲載した「WEDGE SPECIAL OPINION 特別企画:北朝鮮の核問題を考える」における「核保有国の北朝鮮と日本――INFオプション」(リチャード・ローレス元米国防総省副次官)の全文(日本語版)です。

北朝鮮が事実上の核兵器保有国であることはもはや疑いようがない。日本にとって、重大な決断をしなければならない日が間もなくやってくるかもしれない。リチャード・ローレス元米国防総省副次官が描く朝鮮半島の未来、そして危機のシナリオとは――。

 本稿について、谷口智彦氏(慶應義塾大学大学院SDM研究科教授/前内閣官房参与)による解説「米韓同盟は消える 日本は「二重鍵」核戦力持て」はこちら

三代続いた「金王朝」は核兵器と米本土まで届く弾道ミサイルの開発を達成し、地域の安定を脅かす存在になった(REUTERS/AFLO)

朝鮮半島には今後、南北が一体化した「新朝鮮」が誕生する可能性がある。それは、日本にとって悪夢のシナリオになる。選択肢の一つとして、日本へのINF配備を真剣に検討すべき時がきている。

 2020年5月、数週間にわたり動静が不明だった朝鮮民主主義人民共和国の若き指導者が、重要なイニシアチブの発表に合わせて姿を現した。そして金独裁政権の三代目が拍手をする中、朝鮮労働党中央軍事委員会は新たな戦略方針を発表した。その内容は北朝鮮が事実上の核保有国を称するようになったからこそ可能になった激しい口調の脅しの言葉が並び、全体的には目新しさを欠いていたものの、金正恩の国家安全保障チームは今後数カ月にわたり「核による抑止力」を強化すると強調し、新たな核兵器・ミサイルの実験・配備の可能性を示唆したのである。

>>続きを読む