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 東南アジア各地で発行されて華字紙を読むようになってから40年ほどになるが、華人社会の高齢化や若者の華字(漢字)離れを背景に読者層が激減し、1980年代には華字紙は斜陽産業化が始まり、一時はメディア・ビジネスにおける絶滅危惧種の一歩手前の惨状だった。

 だが1990年代半ば以降、中国の経済的影響力増大に伴って息を吹き返す。中国語による中国経済情報の需要が飛躍的に増大したことに加え、2010年前後から中国政府が国家戦略の一環として海外華字紙の積極利用に転じたからだ。潤沢な人民元をテコにし、東南アジア華人社会における経営不振メディアへの資金提供に乗り出した。人民元による華人メディア支配である。

 カネの切れ目が縁の切れ目との俚諺とは反対になるが、カネは確実にモノを言い縁を結ぶ。

 かつての繁体字・縱組の古色蒼然たる紙面は姿を消し、中国の地方紙と見紛うような簡体字・橫組で読み易い記事構成が多くなった。中国政府の狙い通りに、人民元による華人メディア席捲は完成に近づいていると言ってもよさそうだ。

 経営へのテコ入れは、否応なく論調に反映される。誰もカネには逆らえない。

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