昨年11月に2020年のASEAN議長国に就任したベトナムは、一貫した対中政策をとり、ASEAN内における存在感を高めている。また、最近の中国の攻撃的姿勢は、ASEAN各国の危機感を高め、対応に変化を生んでいる。こうした状況を、豪戦略政策研究所(ASPI)のHuong Le Thu上席分析官は、Foreign Policy誌(電子版)7月31日付けの論説で的確に説明している。その主要点をかいつまんでご紹介すると、次の通りである。

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・ASEANの多くの国が、インドネシアに代わるASEANのリーダーとして、ベトナムより適切な国はないと考えるようになっている。

・ベトナムは、南シナ海問題に関しては、実際の最前線国であり、北京と激しい争いをしているが、同時に、ベトナムは地域問題においてASEANの役割を真に重視する数少ない国の一つでもある。

・ベトナムは、海洋紛争において前線の立場を維持し、他のASEAN諸国から外交的に孤立することもあったが、報われつつある。今年、ベトナムが議長国として指揮した第38回ASEAN首脳会議の共同声明は、いつもの曖昧な内容と異なり、南シナ海における中国の行動を念頭に、最近の出来事に対する懸念を表明するとともに、信頼が侵食され、緊張が増し、地域の平和と安全・安定が傷づけられている、と明記している。さらに、声明は、国連海洋法条約(UNCLOS)が海洋権益を決定し、海洋の主権、管轄権、正統な利益を決める基礎である、と強調している。

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