10月4日、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、50年以上も発動されたことのない緊急条例を発動し、デモ参加者によるマスク着用を禁止した。緊急条例により、彼女はほとんど無制限の権力を手にできる。ラムは、6月以来拡大した抗議を沈黙させるために、この緊急条例を使って外出禁止令を出すなど、他の措置も執り得ることになる。

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 中華人民共和国建国70周年の祝賀行事が終わった後、中国は香港により強硬な姿勢を示すのではないかと懸念されたが、そういう方向になってきている。香港のデモに対しては、彼らの要求を部分的に受け入れ、まず騒ぎを収めるというのが取るべき策と思われる。

 おそらく、国慶節で北京に行ったラム行政長官に対して、中国当局から、デモ隊との対決姿勢を取るようにとの強硬路線が指示されたのであろう。緊急条例の発動、それに基づくマスク着用禁止はデモ参加者と香港行政府との間に新たな論争点を作り出すもので、この香港騒動を収めるのに資するものではない。ラムは、デモ側の5大要求のうち、既に逃亡犯条例撤回をしている。警察の武力行使が過剰であったのかどうかの調査委員会設置、デモ参加者の暴徒認定の取り消しなどの他の要求を受け入れて、デモを鎮めることは十分可能であったと思われるが、逆の方向の策が取られている。

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