本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

倒産寸前の旅館がITを活用したおもてなしと働き方改革でV字回復を果たした。システムは他の宿泊施設へも提供され、観光産業の底上げを図っている。 

宮﨑 知子(みやざき・ともこ):1977年生まれ。大学卒業後、リース会社の営業職に7年従事し、老舗旅館の跡取りである富夫さんとの結婚を機に退職。第二子出産後の2009年10月に「元湯陣屋」の経営を夫とともに引き継ぎ、女将に就任。ITを活用した働き方改革と新たなおもてなしに挑戦し続けている。
(写真・井上智幸)

 

 神奈川県秦野市の鶴巻温泉。最盛期には15を超える旅館が軒を連ねた温泉街だ。しかしバブル崩壊後は客足が減少し、近年は宅地化が進む。

 1918(大正7)年に創業した温泉旅館「元湯陣屋」も時代の荒波に揉(も)まれてきた。2009年には10億円の負債を抱え、倒産の危機に追い込まれている。この状況から夫とともに再生に導いたのが女将の宮﨑知子だ。就任当時は2億9000万円だった売上高を6億1700万円(旅館単体/2018年8月期)まで伸ばした。V字回復の背景には何があったのか。

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