5月、経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が相次いで日本における終身雇用制度の継続が難しいとの認識を示し、雇用慣行の見直しを呼びかけた。これはもはや、日本産業界の終身雇用に対する「終末期宣告」と認識すべきだろう。

「善悪の二極化」は危険

 終身雇用の継続が難しい。これは何も今になって分かった話ではない。数年ないし十数年前から状況に気付いた経営者や従業員は大勢いただろう。ただタブー化された話を誰もが堂々と言い出せなかった。それだけのことだ。今回は財界の大物がそろって明言したことで、やっと事実が確定したという感じだった。

 これを受けて、終身雇用を悪者扱いするような論調も出始めた。終身雇用があたかも日本企業や日本経済の成長を妨害する元凶であるかのように表現すれば、それを切り捨てることへの納得感も得られてよいのかもしれないが、単純な善悪の二極化ほど危険なものはない。まずは失敗の本質を突き止めてから、次の一歩を踏み出すべきではないだろうか。

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