子どもに「先のこと」を考えさせるには、どうしたらよいのだろうか。

(篠原 信:農業研究者)

 女性は「逆算思考」が得意な人が多い。将来こうなりたいから、その前にこうなってなきゃいけない。そうなると来年にはこうなっておいて、そのためには今日からこれだけの時間を勉強して・・・と。

 たぶんこの能力は、育児経験によってさらに磨かれる。3時間ごとの授乳で極度の睡眠不足に陥り、フラフラになりながら家事を切り盛りした経験で。「この子が寝たら哺乳瓶を洗って、洗濯物たたんで、晩御飯の下ごしらえをして・・・」。授乳しながら、短い時間で効率よく家事を回すことをマスターする。

 この逆算思考があまりに有効なものだから、子どもにも逆算思考で勉強する意欲をかき立てようとする母親は多い。しかし私の指導経験では、「総領の甚六」(きょうだいの中で一番上が男の子)の場合、逆算思考の話は、どこか遠くのおとぎ話にしか聞こえない。

 私自身も総領の甚六で、母親から「このままじゃあんた、行ける高校ないよ!」と言われたが、「いいよ、働くから」と答えた。勉強した方が給料もらえて裕福な生活ができると聞かされても、「いま楽しい方がいい。勉強嫌いだし。嫌いなことひとつでも減らした方が得」と、馬耳東風。逆算思考は私にちっとも響かなかった。

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