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金なんか残したってロクでもない」が口癖だった 浜松ホトニクスの昼馬(ひるま)輝夫社長 4月3日

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【産経抄】4月3日

 電子機器メーカー、浜松ホトニクスの昼馬(ひるま)輝夫社長は当初、小柴昌俊東大教授の注文を断るつもりだった。宇宙から飛来する素粒子「ニュートリノ」を検出するには、この会社の光電子増倍管が欠かせない。微弱な光を電気信号に変える役目を果たす。

 ▼小柴さんは口径20インチを求めていた。当時最大の5インチに比べて破格の大きさである。しかも「金はない」というから話にならない。もっとも、小柴さんの研究室に入って気が変わった。昼馬さんには、毎朝聖書を読む習慣があった。現代科学のバックボーンはキリスト教だと、信じていたからだ。

 ▼壁に掛かっていた宗教画を見て、「先生も神のみぞ知る絶対真理を追い求めている」と共感した。実は、小柴さんが海外旅行中に気に入って購入した絵にすぎなかったのだが…。小さな誤解が23年後の平成14年、小柴さんにノーベル物理学賞をもたらした。

 ▼「国産テレビの父」と呼ばれる高柳健次郎の門下生とともに、昭和28年に会社を設立した。「人類未知未踏を目指せ」をモットーに、光技術の分野で世界に冠たるハイテク企業に育て上げた。小柴さんの弟子に当たる梶田隆章さんや、万物に質量をもたらしたヒッグス粒子発見のノーベル賞受賞にも貢献している。

 ▼「金なんか残したってロクでもない」が口癖だった。小柴さんが設立した理科教育の向上をめざす団体に、昼馬さんは私財から6千万円を提供した。平成17年には、光に関わる技術を使って起業する人材を育成しようと、地元浜松市に大学院大学を開設している。

 ▼昼馬さんは夢をすべて実現して、先月29日に91歳で亡くなった。肝心の会社の業績はどうだろう。昨年の決算では、売上高、最終利益とも過去最高を記録している。

 


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