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【産経抄】ハリウッド女優リタ・ヘイワースの功績 2月2日



 ハリウッドの人気女優だったリタ・ヘイワースは、第二次大戦中、ピンナップガールとして多くの米兵たちを慰めた。1987年に68歳で亡くなったヘイワースには、アルツハイマー病の存在を世に広めた功績もある。


 ▼晩年の母親を自宅で看病した娘さんは、病気への理解を深める活動にも関わった。病名は、ドイツ人医師、アルツハイマーに由来する。20世紀の初め、妄想や記憶障害が進行する女性の治療を通じて発見した。


 ▼「私はアルツハイマー病です」。94年にレーガン元米大統領(83)が、手書きの書簡で米国民に伝えると、大きな反響を呼んだ。当時すでに患者は、米国だけで400万人を超えていた。治療法はもちろん、原因さえも特定されていなかった。


 ▼世界保健機関(WHO)によると、世界の認知症患者は、推計で5000万人に達している。そのうちアルツハイマー病は、全体の60~70%を占める。病気の原因物質は、「アミロイドベータ(Aβ)」というタンパク質だと突き止められている。


 ▼このAβが脳内に蓄積されているのか、わずかな血液で簡単に調べる検査法が開発された。ノーベル化学賞受賞者の田中耕一さんも研究チームの一員である。検査によって、病気発症のリスクを20年以上も前から知ることができる。もっとも、早期の段階で診断が可能になるだけでは、いたずらに不安をあおるばかりである。


 ▼治療薬をめぐっては現在、世界中の研究者がしのぎを削っている国際宇宙ステーションに滞在中の宇宙飛行士、金井宣茂(のりしげ)さんも、アルツハイマー病に関する実験を行うという。iPS細胞にも、大きな期待がかかっている。今回の検査法の開発が、治療や予防に道を開くきっかけになればいい。