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【産経抄】北朝鮮は憲法9条を欲している 11月30日


北朝鮮の労働新聞が8日掲載した、朝鮮労働党中央委員会総会で報告を行う金正恩党委員長の写真(コリアメディア提供・共同)


 


 中米のコスタリカは日本と同じように憲法で軍隊の保有を禁止している。国際ジャーナリストの伊藤千尋(ちひろ)さんは先日、毎日新聞紙上で日本もこの国の平和主義に学ぶべきだと説いていた。周辺国に対話の重要性を訴え、「平和の輸出」を行っているそうだ。なんともうらやましい。


 ▼おそらく、隣国からのミサイル飛来を24時間監視する必要もないのだろう。北朝鮮は昨日、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射して、日本海に落下させた。Jアラートが鳴らなかったのは、自衛隊がミサイルの軌道を見極め、政府が列島に落下物がないと判断したからだ。


 ▼北朝鮮は声明で、新型ミサイルは米全土の攻撃が可能と、実験の成果を誇示した。ただ今回、太平洋に向かわなかったのは、米国を過度に刺激しないように配慮した、との分析がある。「専守防衛」の日本の反発はまったく気にしていない。北朝鮮はすでに、日本全土を射程に入れた200基以上のミサイルを配備済みである。


 ▼昨日小紙に掲載された、北朝鮮の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員のインタビュー記事を興味深く読んだ。日本人になりすまして、乗員乗客115人を乗せた大韓航空機を爆破する事件を起こしてから、もう30年たつ。


 ▼その10年前には、13歳の横田めぐみさんが工作員に拉致されている。北朝鮮は、日本国憲法が日本人にもたらした「平和ぼけ」をあざ笑うかのように、国家テロを実行してきた。


 ▼伊藤さんによると、西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島には、憲法9条の碑がある。「世界には憲法9条を欲している人たちがいる」。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長もその一人であろう。米国に核保有を認めさせ、朝鮮統一の野望を遂げるまで、日本に邪魔されたくないからだ。