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流行を追うな、外国人のマネをするな 10月3日

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2016.10.3 05:03

【産経抄】流行を追うな、外国人のマネをするな 10月3日

 物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦の研究テーマの一つに、椿(つばき)の花の落下運動がある。きっかけは、文学の師である夏目漱石の俳句「落ちさまに虻(あぶ)を伏せたる椿哉」だった。

 ▼果たして虻を抱え込んだまま、花は着地できるのか。自宅と研究所に椿の木を植え、落ちた花の向きを調べる。空気抵抗の影響をより正確に確かめるために、円錐(えんすい)形の紙模型を使った実験も行った。自ら「珍研究」と称した成果は、英文の論文となって発表されている。

 ▼「まず人を笑わせ、次に考えさせる」、まさに珍研究を授賞対象とするイグ・ノーベル賞が80年前に存在していたら、寅彦も受賞していたかもしれない。今年は股の間から世界を見る「股のぞき」の研究で、立命館大学の東山篤規(あつき)教授らが受賞した。1991年に始まったこの賞では、日本人が10年連続で受賞している。日本には、風変わりな人を評価する傾向があるからではないか、と賞の主催者は見ているそうだ。

 ▼今週は、いよいよノーベル賞の受賞者が発表される。本家本元の賞でも、日本人科学者の活躍が目立つ。今世紀に入って、物理学、化学、医学・生理学の自然科学3賞については、日本は米国に次いで2番目に受賞者が多い。

 ▼実は、寅彦ももう少しでノーベル賞に手が届くところだった。X線を使って結晶の構造を調べる研究で、英国のブラッグ父子が、15年にノーベル物理学賞を受賞している。寅彦もほぼ同じ時期に、2人の研究に匹敵する業績を挙げていたという。

 ▼「流行を追うな。外国人のまねをするな。珍しい所を見抜け」。寅彦が弟子たちを叱咤(しった)激励するために口にしていた言葉である。それを受け継ぐ日本人研究者の受賞ラッシュを、今年も大いに期待している。

 


タグ:産経抄
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